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補綴治療を行うための基本8ヶ月コース詳細

基本8ヶ月コース 各月の概要

歯科医療人に求められていることは、まず治療に必要な顎口腔系諸組織の診断が的確にできることです。治療計画の立案には、まず的確な診断がその前提となります。そして、的確な診断のためには、人体の構造と機能の十分な理解が必須で、さらに治療にあたっては、
①病態診断(現状把握のため)
②発症メカニズムの診断(再発防止のため)
③エンドポイントの診断(治療目標決定のため)
の以上3つの診断が不可欠です。
しかし、その診断と治療の基準となる顎口腔系の基本的重要事項の多くを、私達はアンダーグラジュエート教育の中では教わることがありませんでした。
基本8ヶ月コースでは、この基本的重要事項を理解することにより、臨床で有効な筋と顎関節の触診や、顎運動の検査・診断、女性でも容易に行えて効果的なマニュピレーション・テクニック、顎機能と調和した安全で再現性のある咬合採得の基準、各補綴装置による適切な歯列再建のポイントなど、日常臨床に幅広く応用していくことができます。
この様に、診断・治療の基準を明確にすることで、安全で確実な歯科治療が可能となります。
また、これらの知識と技術を翌日から臨床の現場で応用できるように毎回実習を通して習得します。
この基本8ヶ月コースを基盤として、そこから広がる8つのコースが用意されており、より実践的な対応法を学ぶことができます。

4月「顎機能の診査・診断-Ⅰ(咬合,筋)」

基本8ヶ月コースでは歯科医療の最も基礎となる機能解剖から始まります。従来の解剖の教科書は、日本人ではなく欧米人の基準で記載されているものが多く、また顎機能に関する文献を調べても適正な診査・診断・治療法を知ることは困難です。第1回目の4月では歯科治療の基本となる日本人を対象とした骨格、筋、そして靭帯の形態と構造と機能を学びます。従来のスタティックな解剖では理解し得なかった、生体での筋の機能解剖を知ることにより、筋の圧痛の発現メカニズム、臨床で有効な筋触診法を理解します。また、咬合が顎関節に及ぼす影響、さらに顎口腔系から全身への影響を科学的根拠に基づいて理解します。
 実習では筋触診を行います。これは極めて短時間で行えるチェアサイドでのスクリーニングとして非常に有効で、明日からすぐに臨床に活かして頂けます。
 顎機能スクリーニングの実践編として「顎機能の診査・検査・診断2日間コース」を用意しております。是非ご受講下さい。

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5月「顎機能の診査・診断-Ⅱ(顎関節)」

4月に引き続き、顎関節の解剖を通して顎関節の診査・診断基準を学びます。任意の断層を動画で観察することができる4次元MRI、3次元顎運動解析装置など最新の研究を根拠とした、生きている顎関節の正常な形態と構造と生体機能、そして典型的な顎関節症の病態と徴候を理解します。咬合が顎関節をはじめとする顎口腔系諸の組織に及ぼす影響を科学的にさら詳細に理解し、的確な診査・診断なく治療を行うことがいかに危険か認識します。
 顎関節の状態を詳細に把握するための顎関節触診法4種とSCMレコーダー(プロソマティック・アナライザー)を用いた顆頭運動経路描記とこれらによる診断を実習を通して習得します。これらは、いずれもチェアサイドで行うスクリーニングとして極めて有効です。
 毎年12月には、顎機能スクリーニングの実践編として「顎機能の診査・検査・診断2日間コース」を用意しております。アンテリアジグを用いたチェックバイトの実習なども行います。是非ご受講下さい。

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6月「顎関節症の治療,顎位の決定基準」

チェアサイドとラボサイドの間でトラブルとなることが多い咬合採得に関して、従来の咬合採得法を再考し、顎位の評価・決定基準を明確にします。漠然としていた「中心位」を真に理解し、顎位の設定基準など臨床への応用法を学びます。多くの研究データを根拠として、頭位・体位が顎位に及ぼす影響を理解します。
 顎関節症の臨床症状から病態を理解し、その病態に応じた治療方針を明確にします。また、クローズドロックに対し、女性でも施行可能な改良型マニュピレーション・テクニックを学びます。安全な咬合に構成する上で、補綴治療の考え方の基礎となる、臨床で有効なスタビライゼーション型スプリントの製作実習を行います。
 12月の「顎機能の診査・検査・診断2日間コース」では顎関節症等の症例相談も行います。是非ご受講下さい。

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7月「顎機能に調和した補綴物の製作」

顎口腔系の機能が詳細に解明されてきた現代において、臼歯部の咬合接触をコントロールするだけの、従来のいわゆる「犬歯誘導」では危険であることを理解します。その上で、ブレーシングイコライザーの概念とlateral protrusive tooth guidanceの必要性を理解します。顎口腔系と調和した、安全な咬合構成の基準を学びます。
 また、前方へのガイドに関する基準を明確にします。前方ガイド時の自由域の設定基準、また顆路との調和と審美の両立を図った切歯路の設定基準を学びます。
 ラボサイドに伝えるべき項目とそれを確実に行う方法、チェアサイドで採得した記録から読み取るべき項目、顎機能と調和した咬合を生体へ正確に再現するための咬合器に必要不可欠な条件と最適な顆路調節法を学びます。実習を通してフェイスボウトランスファーからゴシックアーチトレーシング、チェックバイト、咬合器顆路調節まで、誤差やくるいを最小限に抑える臨床で有効な方法を学びます。

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8月「咬合構成の基準とリンガライズド・オクルージョンによる咬合構成の実際」

咬合の7要素を通して、従来明確な基準なく取り扱われてきた咬合の要点を項目ごとに明確に示します。咬合が顎関節や筋に及ぼす影響は従来言われているよりも遥かに大きく、顎機能と調和した咬合の設定がいかに重要か理解します。
 そして、咬合の7要素によって診査、分析、診断、設定を行うことにより、適正な歯列の構成と長期的な保全、さらには全身の健康に貢献できます。また、形態の審美的調和の観点から、前歯歯冠形態の成り立ちを学びます。さらに前歯歯冠形態と歯軸傾斜度、捻転度、側貌、歯槽形態との関係を、前歯部再構築時の基準として習得します。
 有床義歯の治療においても、顎運動検査、客観的咀嚼機能評価などの科学的研究データに基づき、リンガライズド・オクルージョンが他の咬合様式と比較して圧倒的に有利であることを示します。設定要件が予め組み込まれた、硬質レジン人工歯e-Haによる的確で効率的なリンガライズド・オクルージョンの構成基準を学びます。硬質レジン人工歯e-Haを使用した人工歯排列の実習を通して、前歯部歯冠形態から審美の基準を共通認識にし、機能的に圧倒的に有利なリンガライズド・オクルージョンのための的確な排列を行います。

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9月「総義歯臨床のための診査・診断」

総義歯治療の詳細を学ぶことは一口腔単位で顎口腔系全体をまとめるという意味で非常に重要です。これは、フルマウスのクラウンブリッジや、インプラント支台のフルブリッジで歯列を再建する場合はもちろんのこと、矯正治療の場合にも基本となります。
 歯列再建の最も基礎となる総義歯による補綴治療を各項目毎に詳細に確認します。総義歯治療の43ステップ、診査・診断を確実に進めていくことで、難症例においても理想的に治療をまとめることができます。
 より臨床的な視線から、チェアサイドとラボサイドが一丸となってエンドポイントを目指す円滑な連携を「総義歯ライブ2ヶ月コース」で是非ご覧ください。


10月「パーシャルデンチャーの的確な設計システム」

現在欠損補綴の第一選択はインプラントになりつつあります。しかし、全ての患者さんにインプラントによる補綴治療を行うのは不可能であり、その場合パーシャルデンチャーでの対応が必須となります。従来パーシャルデンチャーの平均寿命は2年8ヶ月と言われていましたが、「残存組織保全と機能回復率向上の両立」と基本原則とする“設計の6要素”に基づいて、粘膜と残存歯における支持能力の診断と各組織における力の適正配分、細菌への対応を再考し、治療システムを見直すことで、非常に予知性の高い治療が可能となります。
 実習では、実際に3種類の欠損症例に対して“設計の6要素”により理論的にパーシャルデンチャーの設計を行い、診断用模型上でサベイヤーを用いて表示します。


11月「リジッドサポートの有効性と設定基準」

すれ違い咬合などに代表されるパーシャルデンチャーの難症例に対しては、クラスプデンチャーでの対応では限界があり、的確な対応にはリジッドサポートが必須となります。従来のリジッドサポートであるフルパラレル・ミリングやコーヌス・クローネの利点を活かして、欠点を整理して、最良の形に構成されたパーシャルパラレル・ミリングにより、予知性の高い補綴治療が可能となります。これは、インプラントによる補綴治療では対応できない場合の切り札として習得しておくと非常に有効なシステムです。

11月の最終回では、オープン参加の方々(参加費:歯科医師5,000円、歯科技工士・歯科衛生士3,000円)をお受けしており、8ヶ月間の総括も行います。

さらに実践的な技術、設定基準の習得を目指す方は「トータル歯科技工実践5ヶ月コース(診断と設計,セラミックの基本からミリングの精密技工まで)」を是非ご受講下さい。


以上のように、この基本8ヶ月コースではアンダーグラジュエート教育では教わることがなく、補綴治療を的確に行なっていくうえで認識していかなければならない重要事項を厳選し、明日から臨床の現場に活かせるように毎回実習も含めて歯科医師、歯科技工士が共に学んでいます。

本年度より、多数のご要望にお答えし、新たな試みとして歯科衛生士のご受講もお受けすることに致しました。歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士の3者が協働して最適な歯科医療を実践できれば理想的であると考えております。

本年度もこの基本8ヶ月コースをはじめとして9つのコースが開催されます。どなたも奮ってご参加下さい。